
日々の食卓で親しまれている「陶器」。その素朴で温かな器には、長い歴史や職人の技、地域の文化が詰まっています。この記事では、陶器の特徴や作り方、日本各地の産地や日常での楽しみ方をわかりやすくお届けします。
※この記事で使用している画像はイメージ画像です。
陶器とは何か?
陶器とは、粘土(陶土)を約1,100〜1,250℃で焼成した焼き物のこと。磁器よりも焼成温度が低く、やや厚みがあり、手触りには温かみがあります。吸水性があるため、使い方には多少の注意が必要ですが、そのぶん使い込むことで味わいが増すという魅力も。
一方、磁器は約1,300℃で焼かれ、白く硬く、吸水性がほぼない点が陶器との大きな違いです。
陶器が生まれるまで 〜土から器へ
私たちの暮らしに欠かせない「陶器」。
その温かみのある風合いには、自然の素材と人の手仕事が息づいています。
ここでは、土から器ができあがるまでの基本的な流れを、簡潔にご紹介します。

1. 土練り(つちねり/どねり)
まずは、粘土をしっかり練って空気を抜き、質を均一に整えます。
これはひび割れや歪みを防ぐための大切な下準備であり、陶器づくりの要ともいえる工程です。
代表的な練り方は、荒練りをして粘土の質を均一にし、それから菊練り(練ると菊の花びらのような形になる)をして空気を抜くという練り方です。
2. 成形(せいけい)
粘土を器の形にします。方法にはいくつか種類があります。
- ろくろ成形:粘土を回転させながら形を整える技法。丸い形の食器によく用いられます。
- 手びねり:手のひらや指で直接粘土を成形。自由度が高く、個人制作にも向いています。
- タタラ成形:粘土を板状(タタラ)にのばしてカット・組み立て。角皿や花器など直線的な形に適しています。
- 鋳込み(いこみ)成形:泥状にした粘土を型に流し込んで成形。量産や複雑な造形に使われます。


3. 乾燥・素焼き
形を整えた器は、数日間(1週間から2週間程度とも、条件によります)かけて自然乾燥させ、完全に乾かします。
しっかり乾かしたあと、700〜800℃ぐらいの温度で「素焼き」を行い、器の形を固定します
4. 施釉(せゆう)
素焼き後の器に、焼成するとガラス質になる釉薬(ゆうやく/うわぐすり)をかけます。
釉薬は長石や石灰などの粉末を水に混ぜ合わせて作った液状のものです。
これにより、器には次のような効果が備わります。
- 水漏れの防止
- 表面の強度や耐久性の向上
- 装飾や色彩による意匠性

釉薬のかけ方には、浸す・塗る・吹き付ける・掛け流すなどの方法があります。

5. 本焼き
最後に、おおよそ中温〜高温(約1,100〜1,250℃)で焼成する「本焼き」を行います。
この過程で釉薬が溶融し、表面に光沢やマット感などの仕上がりが現れ、器として完成します。
土と釉薬の個性
土の種類や釉薬のかけ方で、陶器は多彩な色や質感を持ちます。その違いに注目すると、器の奥深さが見えてきます。
代表的な土
陶芸で使われる土には、それぞれ特徴があります。
- 赤土
鉄分を多く含み焼成すると赤褐色になります。柔らかく加工しやすく、初心者にも扱いやすい土です。 - 白土(白陶土)
鉄分が少なく焼成後は白色または淡色に仕上がります。磁器土ほど硬くはありませんが、扱いやすさが特徴です。 - 磁器土
鉄分がほとんどなく高温で焼成すると白色で硬く、光沢と透明感のある仕上がりになります。 - 黒土
鉄分が多く焼成後は黒褐色や暗色になります。独特の風合いが楽しめます。 - 半磁器土
磁器土と陶土の中間的な性質をもち、白色に焼き上がりますが、磁器ほど硬くはありません。 - 鍋土(耐火土)
耐火性が高く高温にも強いため焼成後も形状を保ち、実用品向きです。 - 地場土(信楽土・備前土など)
地域ごとに鉱物成分が異なり、焼成後の色や質感に個性が出ます。
代表的な釉薬
- 灰釉
植物の灰を主成分とする釉薬で、焼成中に鉄分やカルシウム分と反応して、自然な緑~茶系の色に発色します。伝統的な日本の釉薬で、登り窯での焼成による微妙な色の変化も魅力です。 - 鉄釉
酸化鉄を主成分とする釉薬で、焼成条件により赤褐色~黒褐色に発色します。陶器の濃淡表現などに使われます。 - 織部釉
銅を含む釉薬で、緑色の発色と模様が特徴です。鉄分を含む土や鉄釉と組み合わせることで、より豊かな色彩や模様を生み出せます。 - 結晶釉
焼成中に釉薬成分が結晶化して表面に模様を作る釉薬です。鉛や珪酸を含むことが多く、温度や成分の調整で規則的な結晶模様を作ることも可能です。※現在は鉛や一部金属成分の使用が規制されています。 - ラスター釉
金属酸化物を含み、焼成後に金属光沢や虹色の反射を生む釉薬です。現代的な装飾表現によく用いられます。※現在は鉛や一部金属成分の使用が規制されています。 - 無釉(焼き締め)
釉薬をかけずに高温で焼成することで、土本来の素朴な質感や、窯の中で自然に生じる色の変化(窯変)を活かす技法です。
日本各地の主な陶器産地
- 信楽焼(滋賀県)
赤土を主体に使用し、大きな器や狸の置物で知られる。耐火性が高く、登り窯で高温焼成されるため、丈夫で重厚な仕上がりになる。 - 備前焼(岡山県)
無釉で焼き締めることで、鉄分を多く含む土が自然な色変化を示し、重厚感のある器に仕上がる。窯変の美しさが特徴。 - 美濃焼(岐阜県)
白土や赤土を使い、志野・織部など多彩な釉薬技法をもつ。焼成温度や釉薬のかけ方で色彩や質感に幅がある。 - 丹波焼(兵庫県)
日本六古窯のひとつで、赤土を中心に使い、素朴で実用性の高い器が多い。登り窯で焼成され、土味を活かした仕上がり。 - 小石原焼(福岡県)
飛び鉋によるリズミカルな装飾が特徴。鉄分を含む土で焼成し、素朴ながら力強い表情の器になる。 - 益子焼(栃木県)
赤土主体で、関東を代表する産地。素朴で丈夫な器が多く、日常使いに適している。
陶器の美術的・芸術的な側面
陶器は生活道具であると同時に、作り手の感性や技が反映された工芸作品でもあります。一点ずつ異なる表情や、釉薬の流れ、炎の痕跡など、偶然性も含めて「育つ器」としての魅力があります。
陶器の扱いとメンテナンス
陶器は丁寧に扱うことで、使い込むほど味わい深くなります。長く美しく使うための基本ケアを覚えておきましょう。
- 初使用時の目止め
吸水性の高い土もの陶器は、米のとぎ汁で煮ると水漏れや匂い移りを防げます。磁器や施釉陶器では不要な場合もあります。 - 使用後の乾燥
濡れたまま収納せず、風通しの良い場所で十分に乾かします。カビや匂いの発生を防ぐための基本です。 - 電子レンジ・食洗機の使用
使用可否は器の種類や素材によって異なります。特に金属を含む釉薬やアンティーク品は電子レンジ不可の場合がありますので、表示や注意書きを確認しましょう。
まとめ
陶器は実用性と美しさ、そして地域の文化が融合した、私たちの暮らしに寄り添う器です。日常使いのなかで少しずつ変化し、愛着が増していく存在でもあります。
陶器市や窯元巡りなどを通じて、ぜひ「自分だけの器」を見つけてみてください。
